Vol.1で、ジャズでは、タタタタやドゥーダ~よりもっとたくさんの種類の発音を使っているという話、Vol.2では、日本語と英語の母音と子音の使い方の違いについて解説しました。
ここでいくつかの疑問、仮説が浮かんできます。
1. ネイティヴのアメリカ人はみんなジャズが吹けるのか?
2. 逆に、英語が話せない日本人には素晴らしいジャズミュージシャンはいないのか?
答えはどちらもNOです。Vol.3では、管楽器の場合、どうやってタンギングをしたら良いか、さらに掘り上げて解説していきます。
2005年、僕がネバダ州立大学ラスベガス校に留学していた時の話ですが、ビッグバンドの他、吹奏楽やマーチングバンドのクラスを取っていました。
当然僕のような一部の留学生以外は「ネイティヴ」なのですが、特に吹奏楽やマーチングのクラスでは、ジャズのタンギングが出来ている生徒はほとんどいませんでした。つまり、
アメリカ人だからジャズが出来るという訳ではなく、やはりそれなりに聴き込んだり、練習しているとい事です。
日本にも素晴らしいジャズミュージシャンがたくさんいらっしゃるのは承知の事と思いますが、中には海外経験がなく、来日アーティストの共演の際にも、失礼ですが、いわゆるカタカナ英語でコミュニケーションを取られている方も結構いらっしゃいます。
ネイティヴの方と同じく、やはり聴き込む事と練習(努力)によってマスターしているんですね!
これは僕の経験で、管楽器のタンギングにも役立つ話なんですが、ラスベガスの学校に入る前、サンディエゴの語学学校に6週間通っていました。
日本人、韓国人の他、ドイツ語やフランス語圏のヨーロッパ人が何人かいるクラスで、いくつかの発音パターンを一人ずつ先生の前で発表させられた事があります。
その時、先生が
「クラスの中でヒロキの発音が一番良い。だけど、一番口がハッキリ動いていないのが不思議」
と言っていたのを覚えています。
皆さん、英語の授業の発音練習で、(日本語よりも)口をハッキリ、大きく動かすように習ったのを覚えていますか?
本来英語は口を大きく動かさないといけないのに、僕はそれをせずに比較的良い発音が出来ていたのは、管楽器の奏法が関係していると思います。
試しに鏡を見ながら、「ドゥ」と「ダ」をハッキリ口を動かして声に出してみて下さい。
下顎の位置が大きく変わるのが分かりますでしょうか?(上顎は構造上、動きません)
管楽器の場合、金管、フルートなどはマウスピースを唇に当てていて、サックスやクラリネットなどはマウスピースを口にくわえています。
つまり、これだけハッキリ口を動かしてしまうと演奏に支障があるのです。
僕はジャズの練習をする過程で、唇の動きを最小限に押さえ、限りなく舌のコントロールのみで発音出来る能力をある程度自然に身に付けていたんですね(腹話術に近い感覚かも知れません)。
これが「ドゥーダ ドゥーダ」と声に出す練習をしても、管楽器では再現出来ない理由ではないでしょうか。
Vol.1、Vol.2で紹介で紹介したジグス・ウィグハム氏やアル・ジャロウ氏の動画はとても参考になりますが、前述した理由から、スキャットと管楽器の演奏は少し違うという事を知っておくと良い気がします。
特に(あえてカタカナで書いた場合の)「バビブベボ」「パピプペポ」は、スキャットではとてもカッコ良いのですが、一度上下の唇を合わせてから破裂音のように発声するので、管楽器の演奏には適さない発音だと思います(マウスピースがあると出来ません)。
その点、トランペット奏者であり、ボーカリストでもあるチェット・ベイカー氏は管楽器のタンギングに近いスキャットをやっていてとても分かりやすい気がします(下記の動画の1’00″辺りから)。
勉強になりますね!