前回の記事では、ジャズのタンギングが「ta-ta-ta-ta」や「ドゥーダ ドゥーダ」のような単純なものではないという話を書きましたが、今回はこれをもう少し掘り下げたいと思います。
なぜ日本人がジャズを流暢に(ネイティヴのように)演奏するのが難しいのか?
それは、日本語と英語の違いにあると思います。
外国人から見ると、日本語は、まず基本になる文字が50もあり、ひらがな、カタカナ、漢字が混ざっているので、とても難解に感じるそうです。それに比べて英語のアルファベットはたったの26文字しかありません。
一見日本語の方が複雑な気がしますが、話す事(発音する事)だけを考えてみましょう。
話すだけであれば、ひらがな、カタカナ、漢字の区別はいりませんよね。一番の大きな違いは、
日本語は「ん」以外は全て「母音」、しかもたった5つの母音(あいうえお)で発音出来てしまうということです!
A-I-U-E-O、KA-KI-KU-KE-KO、SA-SHI-SU-SE-SO〜のようにです。つまり、
日本語は、5つの舌のポジション(シラブル)と「ん」(m)をマスターしてしまえば、全て発音出来てしまう言語
だということですね(生まれてから今まで、これしか練習していないのです)。
それに比べて英語はどうでしょうか?
下記のリンクを見てみてください。
http://hatuon.sakura.ne.jp/minikouza/hatsuon/
この表によると英語は母音だけでも24種類の発音があるのが分かります。そしてもうひとつの大きな違いは、
英語には「子音」だけで発音する音がある事!
しかもそれがさらに24種類もあり、これらが組み合わさって言葉が生まれるわけです。
たとえば、Trumpet(トランペット)。
これを日本語的に解釈すると、『To-Ra-n-Pe-To』。「ン」以外には全て母音が入り、「5文字」の言葉であることが分かります。
それに対して英語の場合、母音は「u」「e」の2つのみ。あとは子音です。
英語は発音的に考えると「音節」という考え方になるので、『Trum-Pet』という2つの音節になります。
※日本語の歌詞は「文字」ごと、英語の歌詞は「音節」ごとに音符が割り振られています(ジャズではありませんが、尾崎豊さんの「I Love You, いまだけは〜♪をイメージしていただくと分かりやすいかも知れません)。
http://translate.weblio.jp
↑発音をイメージ出来ない方は、このサイトの「原文」というところに「Trumpet」と入力し、その下の「再生」をクリックしてみて下さい。
前回紹介したJiggs Wigham氏の動画の「ロック・アラウンド・ザ・クロック」(1’49″〜)をあえてカタカナで書くと、
「ドゥール リッ ディール リッ ディール リッ ディ(ット)
ディール リッ ディール リッディール リッ ディ(ット)」※(ット)←小さい「t」が入る感じ
と書きましたが、この※のような発音が、ネイティブはただ舌で息の流れを遮断している「t」なんですが、日本人はカタカナの「ト」だったり、ローマ字の「To」になってしまうんですね。
以前とあるプロの(日本人の)ジャズトランペット奏者が、「フレーズによってはタンギングしなくて良い所がたくさんある」と言っていましたが、これは「日本人だと母音で発音してしまうので、ヴァルブやキーに頼れる所、金管の場合はリップスラーに頼れる所はタンギングをしない方がマシ」という考え方の方が近い気がします。
実際ネイティブは「子音」を使って発音していると思いますね。
トランペットやサックスに比べて、トロンボーンで流暢に吹く人が少ないのは、「スライド」という機能上、楽器が助けてくれないので、よりきちんとタンギング練習をしないといけないのだと思います。
ちなみに、前回、今回のブログも「あえて」カタカナで書いている部分もありますが、説明のしようがないので使っているだけ、本来はナンセンスです。
やはりJiggsや、前回のアルジャロウ氏のような発音をよく聴いてマネをしてみるのが良いと思います。
「ジャズは英語」という、ざっくりした表現で書きましたが、ジャズのルーツはアフリカやヨーロッパだったりするので、これも語弊のある表現かもしれません。
ただ、「アルファベット」を使用する言語という意味では共通していると思うので、たとえばヨーロッパ人のジャズはアメリカ人とは違う発音かも知れませんが、「訛り」や「個性」の範囲だと思います。
生まれた時からこれらの言葉を話している人たちは、ある意味楽器を始める前からタンギングの練習をしているようなものです。
それに対して、全くルーツの違う日本人は、新たに勉強、練習をしないと難しいという事ですね。
その理由がここに書いた部分ではないでしょうか?
僕ももっと突き詰めて練習し、効果的な練習方法が見つかったら紹介したいと思います。
ちなみに↓は2年前に、アレン・ハーマンさんという方(コロラド大学でジャズと物理学を教えている凄い方。ウディ・ハーマン楽団などの在籍経験あり)と共演させていただいた時の動画です。
やはりネイティブは素晴らしいです!
次回は英語と管楽器での発音、練習の仕方の違いをもう少し掘り下げてみましょう!