2014年からFacebookで「管楽器&アドリブが上手くなり隊!!!」というグループを運営しています。
原則的に「誰でも参加可能」な状態にしているので、毎日数人の参加希望者がおり、現時点で1700人を超えました! プロ、アマ、年齢や住んでいる地域に関係なく、情報交換や交流の場となり、管楽器やジャズのコミュニティー、マーケットが活性化してほしいと願っています。
さて、今日は、このグループが「誰でも参加可能」「無料」とは言え、情報発信の管理人をやっている立場で、特にアマチュアの方(グループ参加者や生徒さん)に対して常々感じている事を書いてみようと思います(いつも歯がゆい想いがありながら、簡単にコメント出来る内容ではないので、一度ブログという形に残し、同じ事を感じた場合、今後はこのページのリンクをシェアしたいと思います)。
このグループに参加しただけでは上手くなりません!
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グループの情報のところには、現時点で(2021年1月の段階で)このように記載をしています。
冒頭にも書きましたが、このグループの「目的」は「管楽器やアドリブに少し興味のある人、上手くなりたい人がちょっとした情報交換をする場」です。
多くの方にはご理解をいただけていると思う反面、特に初心者の方が(無意識に)ハイレベルな要求、欲求をもっているように感じられる時があります。
たとえば、新たに参加された方のご挨拶で、『このグループに参加してアドリブを習得したいと思っています!』だったり、質問で、『どうやってアドリブを練習したら良いですか?』だったり…
「この内容のどこがハイレベルなの?」と思われた方は、ぜひこの先をお読みください。
まず『このグループに参加してアドリブを習得したいと思っています!』について。
結論から書きますが、それは無理です。そんなハイレベルな情報発信をしているグループではありません。違う言い方をすれば、アドリブを習得出来るレベルの情報を、プロアマ誰でも参加、発言が出来るレベルの無料グループで行う事自体が不可能であり、危険すぎます(記事を読んだだけでネイティブスピーカーになれる無料サイトなんてありませんよね?)。
続いて『どうやってアドリブを練習したら良いですか?』のような質問。
抽象的すぎて答えようがないのです。『どうやったら楽器が上達しますか?』も同じようなものですね…
質問者側(生徒さん側)の情報がなさすぎるんです。いい指導者、講師であれば、必ず対象者の情報を細かくヒアリングします。そうしないと、その人に合った正確なアドバイスが出来ません。この一言の質問で正確な回答が出来たら「神」です。
たとえば「何年くらい楽器をやっているのか」という情報は僕だったら知りたいのですが、
たったこれだけでも、中学/高校の6年間、ほぼ毎日練習していて現在大学のジャズ研にいる人と、同じような中学/高校生活を送っていたけど、そこから30年のブランクのある50歳近くの方では全然状況が違いますよね?
ブランクの有無もですし、大学生なら今も毎日練習出来る状態にあるかもですが、50歳の社会人であれば、週末に1,2時間程度しか練習出来ないかもしれません。
つまり、相手の状態によってまったく答え(アドバイス)が異なるのです。
『アドリブが上手くなりたい』という方の中には(クラシックの)音大卒のプロの方もいらっしゃいます。この方の場合、楽器そのものは平均以上の技術があり、いわゆるクラシックの音楽理論はある程度わかっている可能性が高いですよね。この方に対し「まずはスケール(音階)を吹けるようにしましょう」とはアドバイスしません。
ちなみにジャズでは「ダイアトニック・スケール」という言葉を使います。おそらくクラシックでは使わないのですが、音大卒の方なら「普通のドレミファソラシド」です、と教えたら終了です。でも、「スケールって何ですか?」のレベルの方には「長調っていうのは明るく聴こえる音階で、全音、全音、半音のように並んでいます」と教える必要があるかもしれません(全音、半音って何ですか?になる可能性もあります)。
コードネームもクラシックでは使いませんし、ドイツ語読みが一般的なので、たとえば「C」は「ツェー」と読みますが、アルファベットの表記自体は同じですし、構成音が「ドミソ」なのはわかるので、アマチュアの方で「まったくコードがわからない」と言っている人と同じ状態ではないのです(音大卒は「C Maj7」と「C7」の違うはわからないかもですが「C」の構成音はわかります/移調の知識もあるので「D」になったら「レファラ」なのもわかります)。
繰り返しますが、いい指導者、講師であれば、正確なアドバイスには細かいヒアリングが必要だとわかっています。↑ たったこれだけの事を説明するのにすでにこの文字数なわけですから、これを無料の掲示板レベルでやるのは不可能だとご理解いただけるのではないでしょうか。
アマチュアの回答には気をつけてください!
ここまで書いてきた理由からして、このグループでプロの方が正確、丁寧にアドバイスをしてくれるという事は原則ありません。質問をしても誰からも返答がないか、信ぴょう性の低いアマチュアの方の回答しか得られない可能性が高いです。
以前「金管楽器、バズィング」のような検索をして、Yahoo!知恵袋を覗いてしまった事があるのですが、おそらく中学校の吹奏楽部で金管楽器を始めた人が「どうやったら吹けるようになりますか?」みたいな質問をしていて「まずはバズィングで音を出せるようにしましょう」と別のアマチュアの方がコメントをしていました。さらに、このようなコメントを信じた吹奏楽経験のない顧問の先生が、生徒に対しバズィングで音が鳴るまで楽器を持たさないというような悪循環まで起きていました。
※「バズィング」というのは金管の人が唇やマウスピースだけで「ブー」とやってるアレです。
吹奏楽部に入って金管担当になって「マウスピース(バズィング)で音が出ないと楽器を吹いちゃダメ!」なんて事を先生や先輩に言われていませんか?必要かそうでないかは人によると思います。時間が出来たら英訳もしてブログにしますが、4年前の有名トロンボーン奏者によるバトル?を紹介します!続く pic.twitter.com/H1BHRTlsS3
— Hiroki Fujii/Trombone/Mt.Fuji Music Inc. CEO (@hiroki_trb) May 19, 2019
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これも時間が出来たらブログに書こうと思って、いまだにツイッターのみなんですけど、もちろん「バズィング」の練習自体は上達の選択肢の一つではあるんですが、絶対ではないです。このツイッターに書いたように、世界レベルのプロであっても、「やるかやらないか論争」が起きているほどです。僕はヤマハ講師時代にゼロスタートの人を何十人とレッスンしましたが、ほとんどの人がバズィングをしないでも音が出ました。
結論と言えるかわかりませんが、僕の答えは「やってみて自分に合うなら続ければ良い」。これに尽きます。
アマチュアの方は、もちろん「良かれと思って」なんでしょうが、相手の状況を把握せずに、たまたま自分にとっては正解だった事を「唯一の正解」のようにコメントしている方がいらっしゃいます。これには質問する側も答える側も、本当に気をつけていただきたいと思っています。
最初から書いている通り、このグループは「交流」の場です。
質問を封じているわけでもないし、「アマチュアの方は答えないでください」と申し上げているわけでもありませんが、
「質問をする時はなるべく具体的に」
「回答する時は、“私の場合”こんな事をやったら出来るようになりましたよ!良かったら試してみてください」
といった内容にし、特に相手がどういう方か(プロかアマか)もわからない場合は、質問者も「参考程度」に受け止める事が大切ではないでしょうか。
“本気で”上手くなりたい人はどうすれば良いのか?
この記事のタイトルには、あえてFacebookグループのタイトルには書いていない「本気で」という言葉を付け足しました。
結論を言います。
ご自分と相性の良い先生を見付けて(お金を払って)習いに行ってください(話を聞いてみてください)!
これしかありません。僕のレッスンブログの中でも特にバズった「ウィントン・マルサリスの練習方法」にも書いてありますが、世界的なトランペッターであり、指導者としても定評のある彼も、12個に分けたポイントの1番目に「良い指導者を探す事」を挙げています。
やはり無料の情報を読んだり、動画を観るのと、直接レッスンをしてもらうのとでは全然違います。
僕の言う「良い指導者」というのは「自分に合う指導者」の事。
別の人には合うけど、自分には合わないという可能性も十分にあります。有名なジャズプレイヤーに習っても、初心者に対してわかりやすく教えられない方も正直たくさんいらっしゃいます。
もちろん、これは僕自身にも言える事で、僕と合う生徒さんもいれば、合わない生徒さんもいます。
欧米の場合、たとえばゴルフのタイガー・ウッズのコーチのような「レッスンプロ」は、選手としては無名でしたが、コーチとしては超一流だったりします。日本の場合(音楽業界の場合)、「教える」という事に対し、そのための技術をきちんと身に付けていないのに「先生」を名乗っているケースも少なくないし(ライセンスもないので)、また、習う側も、まるで小中学校の義務教育のように、「受け身で一つの正解を求めに行っている」事が多いように思んですよね。
つまり「習う側」も「教える側」も「何となく」なんです。
日本には都心部ならほとんどすべての駅の周りに英会話教室があると言っても過言ではないと思いますが、中学、高校、人によっては大学でも英語を勉強し、さらに英会話教室に通っていても、ほとんどの方が喋れるようになりません。英会話教室の数と、英語を喋れる人の数が比例しないのです。楽器そのものやアドリブが上達しないのも、ほぼこれと同じです。
『モチベーション』とは?
この言葉、よく耳にすると思いますが、「やる気」の事だと思っている方が多いのではないでしょうか?
英訳すると『動機付け』と出てきます。僕は「やる気」以前の問題で、「やる気が起きるための動機」、つまり「なぜ?」の部分が大事だと思っています(動機が不明確だからやる気が出ないんです)。
前述の英語で説明すると、たとえば、急に海外出張が決まった方のモチベーションは「習得しないと仕事にならないから」「仕事にならないという事は、お金をもらえないから(生活、命がかかっているから)」という風に「動機が明確」ですよね。さらに、「渡航予定の3ヶ月後まで」のように「いつ」も明確だし、IT 関係の人なら、「まずはその仕事に必要な専門用語から」という風に「何を学ぶか」も明確になります。
楽器の場合でも「娘の結婚式に(サプライズで)サックスで1曲披露したい!」というようなモチベーションの人は「動機が明確」で、「いつまでに何をやるべきか」も明白です。先生のほうも、もしも生徒さんが福山雅治さんの「家族になろうよ」を披露したいのであれば、とりあえず時間のかかる基礎はすっ飛ばして、その曲で使う指を教えて、音を出せるようにしてあげれば良いわけです。
もしもこの状況で「ちゃんと呼吸から、基礎から、スケールから」などと教える先生や「ジャズをやりなさい」と言う先生だとしたら、それは先生のエゴでしかないですよね。
このように、生徒さん側にも明確な「モチベーション」があり、それに対して最短のアプローチで教えられる先生というのが理想の関係と言えます。
ですが実際は、町の英会話教室のようにこの関係にならず、高いレッスン料を無駄に払い続け、何となく教えている先生や会社を「支えてあげている」お人好し?の生徒さんは少なくありません。もったいないと思いませんか?
僕はけっして「本気」を要求しているわけではないので、この点も誤解のないようにしてくださいね。
アマチュアの方は、自分のペースでゆる〜く続けられるのも良いところです。実際、僕が大宮でやっているビッグバンドの教室は、ゆるくアンサンブルを楽しみたい人の集まりです。技術より人間関係を重視しています。とは言え、「人前で演奏する以上はお客様がいらっしゃるので、出来る範囲で努力して、ベストは尽くしましょう」という指導をしています。
そろそろまとめますが、「管楽器&アドリブが上手くなり隊!!!」はレッスン料すら発生していないオンラインのグループなので、「極めてゆるい」コミュニティです。それだけで楽しめる方や、習わないでもある程度自立していて、ご自身で必要な情報だけを吸収して上達出来る方はそれもアリです。ただ、「本気」で上手くなりたい方は、お金を出してそのための情報を取りに行ってください!
その際は「自分のモチベーションは何なのか?」「本気度はどの程度なのか?」「具体的に何をやりたいのか?」などを可能な限り明確にしてみてください(ちなみに僕のレッスンは通常のレッスンと言うより、この辺りを導くカウンセリングのようなものです)。
「管楽器&アドリブが上手くなり隊!!!」も、一応こうしてプロが運営していますので、無料とは言え、Yahoo!知恵袋などよりはまともな情報コミュニティーにしたいと考えています。ただ、それには限界があります、という話をしたかったのです。
長くなりましたが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
※Facebookではなく、このブログを最初にご覧になった方で、このグループに興味のある方は、ぜひ参加申請をしてみてください!
マウントフジミュージックスクール
代表:藤井裕樹(フジイヒロキ)