ロシアとの国境線が約1300km もあるフィンランド。ウクライナ戦争は決して他人事ではなく、何かと不安な日々が続いておりますが、、、。先日発表されましたワールド・ハピネス・リポートでは、フィンランドは5年連続「世界一幸せな国」に選ばれました!
今回はそんなフィンランドに住む私が、年末年始で日本に帰国した際に体験した逆カルチャーショックの話です。
日本の便利さ
これはポジティブな「逆カルチャーショック」です!
日本は、夜遅い時間でも外でご飯が食べられ、コンビニで物が買え、お酒も手に入ります(フィンランドはお酒の販売は21時まで)。ネット注文をすれば、早ければ次の日に届くスムーズさ!
私のように、大きな楽器にスーツケース、子連れの旅行は荷物運びがとても大変なのですが、次の目的地まで滞在先ホテルや近くのコンビニから送れるなんて、本当に便利です。そうそうほかの国ではありません。
フィンランドの郵便事情は、紛失こそ少ないものの、この15年くらいでかなり値上がりしたうえに、配達に時間がかかるようになりました。
ただ、日本のこういった便利さにも代償があります。家族の元に帰らず、交代勤務で早朝や深夜にも働いている人々。土日祝日も休まない会社、スーパー、小売店。
もちろん医療関係、警察、消防、ホテル、交通機関など、どの国でも夜勤が必要な職種はありますが、フィンランドでは22時を過ぎると、ほとんどの店が閉まっています(人口が少ないので、24時間営業をしても経済的利点が低いからかもしれません)。
選択肢の多さ
日本は、食べ物にしても、物品にしても、値段はピンキリで選択肢が豊富。 ランチは500円でも済ませられるけれど、3万円かけることもできる。3000円でも宿泊出来るけれど、10万円の高級ホテルもある。物価が高めのフィンランドでは、学食を除けば500円以下でご飯を食べられる所など、ほぼありません。ですが、街一番の高級レストランでも、お酒を含まないのに、一人当たり3万円かかるようなコース料理などは聞いた事もありません。
お店や、お店に並んでいる品物も、日本ではバラエティに富んでいます。フィンランドでは多少モノポリー的な所があり、どこに行っても同じような物が目につくかもしれません。
管楽器を扱っている楽器屋さんは、ヘルシンキ周辺には二軒しかなく、置いてある楽器の種類もだいぶ限られています。
修士号、博士号まで取れる音大は、フィンランドではシベリウス音楽院のみですが、日本には首都圏だけでも何校もあります。また、日本の大都市では、邦楽から西洋音楽、民族音楽からポップス、ジャズまで、いろいろなジャンルの音楽が何でも生で聴けますよね。島国なのに、コロナ禍前は外国から毎月のように大所帯のオーケストラや世界的に有名なアーティストが来日し、公演を行っていました。フィンランドではそのような大イベントは一年に数えられる程しかありません。
サービスとゴミの関係?
日本は街が清潔で、道路にゴミが無い。ゴミ箱がないのに、ほとんど誰もポイ捨てをしない。これは、多くの外国人がとても不思議に思う事の一つだと思います。こちらでは「自治体が道路掃除をしてくれるから」と、結構人任せなところがあります。
ですが、皮肉な事に、日本で普通に買い物をした後に出るゴミはすごい量です。原因は過剰包装、サービスでしょうか。日本の「サービス」「思いやり」は世界でも評価されている文化ですが、良いサービスをするために、過剰包装になってしまっているのです。簡単な事ではないのでしょうが、もう少しシンプルな包装でゴミが減らせるようになると良いな、と思っています。逆にフィンランドでは「もうちょっときれいに包んでくれても、、」と思う事もよくあります。
非デジタル文化?
日本でのデジタル化の一部は、良い意味でも悪い意味でも、ほかの多くの国より遅い気がしました。カードでの支払いも増えたとはいえ、日本では現金も持ち歩かないと不安です。
(ちなみに、こちらでは200円ほどの現金も財布に入っていないという状態は、結構一般的です)
何もかもがデジタル化されてしまったフィンランドでは、窓口での質問の答えが「あぁ、それネットに書いてあるから」「ネットで予約してね」「スマホで切符買って」というのも日常茶飯事。「窓口」というものの存在自体も、だいぶ減ってきています。対面で物事を済ませられない事に、私でもムカっとくることもありますし(笑)、特に高齢者は大変でしょうが、この流れは進む一方なのでしょう。
逆に、日本の行政関係は、あまりにもデジタル化されていなくて、本気で逆カルチャーショックでした。日本のパスポートを申請するためには、家族に戸籍謄本を取りに行ってもらうところから始まり、申請書も手書き、運転免許証の更新も超が付くほどアナログで、昔から変わっていない事にびっくりしました。
音の世界
そして、「音」の世界。
日本人は他人に迷惑をかけたくないので、公の場では静かです。
フィンランド人も、静寂を大事にします。
ですが、日本の「自動音声」のすごいこと!
これは相当な逆カルチャーショックです。
ドラッグストアに行けば、商品に対する宣伝音声がワンワンとなっているし、大きな駅のホームでは、発車の合図、音楽がいくつも入れ替わり立ち替わり鳴り響く。デパートやモールでは、それぞれのお店が違った音楽をかけている。目が回りそうになります。
パチンコ屋など、勿論入れたものではありません。
そして、家に帰っても、家電がよく喋ること(笑)。
それなのに、保育園の子どもたちの声がうるさいとか、公園で遊ぶ声がうるさいと問題になってしまうのは、不思議です。
気付かないうちにストレスになっているかもしれない機械音、宣伝の自動音声などの騒音が減らせたら、心が落ち着いて、もう少し子どもの声やそれ以外の自然な音に寛容になれるかもしれませんね。
ほかにも色々とありますが、こんな事を考えた一時帰国でした。
さて、去年の4月から書かせていただいたこの連載ですが、年度末の今回で一旦終了になります。今までお付き合いいただき、どうもありがとうございました!
今後も時折更新させていただくかもしれませんが、その際はまたぜひ読んでいただければ光栄です。
最後に、平和への願いも込めてユーフォリア・ブラス・セクステットの「島唄」をお届けします!
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フィンランドの金管アンサンブル、ユーフォリア・ブラス・セクステットのファーストアルバム、「Kun 〜時(とき)」。ヘルシンキ市立劇場の女優、歌手であるエミリア・ニューマンをソリストに迎え、1950〜1960年代にフィンランドで流行った歌を中心に収録。斬新な編曲で好評を博す。
ヴィサ・ハーララ(トランペット・キュミ・シンフォニエッタ首席)
元フィンランド放送交響楽団トランペット副首席。ブラジル音楽を心の拠り所にしている、マルチインストゥルメンタリスト。
ミーッカ・サーリネン(トランペット・フィンランド放送交響楽団副首席)
元々、スタジオミュージシャンとして、ポップス系や、ロックバンドでも働いていたが、放送響入団後はバロックに目覚め、現在はフィンランドバロックオーケストラ団員、シベリウス音楽院講師を兼任。
ユッシ・ヤルヴェンパー(ホルン・ユヴァスキュラ・シンフォニア首席)
元フィンランド国立オペラ劇場オーケストラ、副首席契約団員。自身の出身地である地方都市にて、音楽祭を定期的に主催している。
アンナ マイヤ・ライホ イヘクウェアズ(トロンボーン・トゥルクフィルハーモニー副首席)
元フィンランド護衛隊音楽隊副首席。トゥルク・ジャズオーケストラの設立メンバーでもあり、ジャンルを超えたクロスオーバーを得意とするトロンボーン奏者。
児島瑞穂(ユーフォニアム・北ヘルシンキ音楽学校)
東京都調布市出身。国立音楽大学、フィンランド国立シベリウス音楽院卒業。フリーランス音楽家。トロンボーン奏者としても、オーケストラの契約団員やエキストラとして活動。
アレクシ・サラスカリ(テューバ・北部キュミ音楽学校)
キュミ・ブラスイベント芸術監督。吹奏楽指導者、指揮者としての評価も高く、フィンランドの吹奏楽指揮者オブザイヤーを2020年に受賞。
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