夏休み真っ只中、“白夜”のフィンランドから、3回目の音楽便りです!
Vol.1、Vol.2のブログを読んでくださった皆様、ありがとうございます。今回初めて読んでくださる方、初めまして!
フィンランド在住のユーフォニアム、トロンボーン奏者、児島瑞穂です。
『夏休み真っ只中』と書きましたが、、、そうなんです! フィンランドでは、小中学校の修了式が6月の第一週目の土曜日で、今はもう夏休み。8月のお盆の頃には、新学期が始まります。
先日、世界をまたにかけて大活躍中の南西ドイツ放送交響楽団の首席トロンボーン奏者、清水真弓さんとスケジュールの話をしていたのですが、「やっぱりヨーロッパって北から順に夏休みに入るんだ〜!?」という彼女の発言で、私も初めてその事実に気付きました。バルト海を挟んで、少しフィンランドより南にあるエストニアでは、こちらより1週間遅く学校が夏休みに入り、ドイツ辺りでは夏休みは6月下旬や7月からのようです。
私が教えている音楽学校は、既に5月の末から夏休みに入りました。こちらでは学期末に、お世話になった先生へ、任意でカードやプレゼントを贈る習慣があります。私も最後のレッスンの時に生徒からチョコレートやお花をもらったのですが、そのうちの一つがあまりにも可愛い花束で嬉しかったので、記念に今回のタイトルに使った写真を撮ってみました。
皆様、子どもの頃の夏休みといえば、何を思い出されますか?
私は、親の実家に長期滞在させてもらった事、海、学校のプールや部活です。フィンランドの子どももやはり、「おばあちゃんの家」や別荘に行きますが、学校のプールや部活動はありません。その代わり、外部の水泳教室、音楽講習会、サッカー合宿などはよりどりみどりです。
実は、学校にプールがあるのって、島国の日本らしい、世界に誇れる教育の一つなのでは、と思っています! そして、フィンランドの室内プールは、夏は閉まっている所が多い、、。
外で泳ぎなさい、という事なんでしょうね(笑)。暑い日には、屋外プールも近場の湖も、朝から晩まで(明るいので、20時頃から泳ぐ事も出来るのです!)夏を満喫する人で混雑します。
そして夏休みがもう3週間過ぎ、このブログが公開になる本日は「夏至の週末」、フィンランド語では「Juhannus – ユハンヌス」、または少しお茶目に、「ユッシ(男性の名前)」とも呼ばれる週末です。
日本ではお休みと言ったら「盆正月」、フィンランドでは、そこが「夏至とクリスマス」です。音楽家は、仕事を引き受けなければ、両方とも休みに出来ますが、たとえば医療機関、交通機関などで働いている人は、休みの取り合い(笑)になる期間です。フィンランドでは夏至の頃の週末に祝いますが、エストニアやノルウェーでは、曜日とは関係なく、毎年6月24日が夏至の祝日となっているようです。
そして、この夏至にピークを迎える“白夜”。日本でも確か地理の授業で習いますが、実際に体験してみないと、どんな感じなのかピンとこないかもしれません。この時期の北欧では、日が東から上って、西へ沈まない、、、。早朝も、昼も、夜も、深夜まで明るい。ヘルシンキでは数時間、薄暗くなりますが、23時頃に外を出歩くと、「明るいのに人がいない」という、一見ゴーストタウンのようでもあります。
時計を見ないと時間はわからないので、我が家の子どもたちはよく、
「ママ、今まだ朝?昼?夜?」
と聞いています(笑)。明るいので、日中夜の区別がつかないのです。
さて、この写真は何時頃だと思いますか?実は、これはフィンランドではなく、海を隔て隣の国、エストニアの首都タリンの旧市街なのですが、撮影時間は去年の6月23日、深夜0時16分。もちろん編集無しです。
北に行けば行くほど日が長くなるので、ラップランドと呼ばれる地方では本当に夜中でも昼間のような明るさです。また、この時期のフィンランドは、気候的には過ごしやすい時期でもあります。暑い日が続くと、我が家のように、扇風機も無いような家ではかなり暑くなりますが、それでも外はカラッとしていて、日陰は大抵涼しく感じられます。北海道の爽やかな夏のような感じかな、と思います。
そして今、正に多くのフィンランド人が、別荘やコテージで夏至を堪能している所でしょう。別荘といっても、年中過ごせる豪華な家を持っている人もいれば、水道や電気のない、簡潔な森小屋の所もあります。釣りをしたり、読書をしたり、サウナに入って湖で泳いだり、それぞれのんびりと過ごす人が多いようです。
音楽家の夏休みは、長く取ろうと思えば長く取れるので、夏休み丸ごと2ヶ月以上コテージで過ごす人もいます。逆に、ライブツアーでぎっしりスケジュールが埋まっている人もいますが、しばらくの間、仕事を忘れ、リラックスする事で、心と体の充電が出来る休暇は大切にされています。
こちらは、去年、友人家族と使用した「ラグジュリー」な貸別荘。この広々とした一軒家の他に、綺麗なワンベッドルーム付きの「サウナ小屋」が庭に。
そしてサウナは、別荘やコテージに付き物です。別荘でなくても、少し広い家であれば、集合住宅でサウナ付きの家も、普通にあります。「サウナ」がフィンランド語から来た単語なのはご存知の方も多いと思いますが、一昔前までは、政治や会社の大事な話でも、サウナに一緒に入ったら、腹を割って話せる、などと言われていました。
また、百年程前までは、何と出産場所としても使われていた、フィンランド人の生活とは切り離せないのがサウナです。私の義母は、何故かサウナに入らない人なのですが、彼女以外でサウナが嫌いというフィンランド人には、ほぼ会ったことがありません。
また日本では、サウナにテレビが付いていたりしますが、それを初めて見るフィンランド人は大抵びっくりします。フィンランド人の理的なサウナは、湖畔や海辺にあり、窓から美しい景色を眺めながら、静けさに浸り、リラックスして話ができる場所だからです。私にとっても、湖畔のサウナと冷えたビールは、至福のひと時です(笑)。
最後に、今回の音楽は、広くフィンランド人に親しまれている歌、「オイ・スーリ・スン・ランタス・アウティウス」の合唱指揮者のマッティ・ヒョッキ編曲の合唱曲版を、金管六重奏にてお届けします。
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フィンランドの金管アンサンブル、ユーフォリア・ブラス・セクステットのファーストアルバム、「Kun 〜時(とき)」。ヘルシンキ市立劇場の女優、歌手であるエミリア・ニューマンをソリストに迎え、1950〜1960年代にフィンランドで流行った歌を中心に収録。斬新な編曲で好評を博す。
ヴィサ・ハーララ(トランペット・キュミ・シンフォニエッタ首席)
元フィンランド放送交響楽団トランペット副首席。ブラジル音楽を心の拠り所にしている、マルチインストゥルメンタリスト。
ミーッカ・サーリネン(トランペット・フィンランド放送交響楽団副首席)
元々、スタジオミュージシャンとして、ポップス系や、ロックバンドでも働いていたが、放送響入団後はバロックに目覚め、現在はフィンランドバロックオーケストラ団員、シベリウス音楽院講師を兼任。
ユッシ・ヤルヴェンパー(ホルン・ユヴァスキュラ・シンフォニア首席)
元フィンランド国立オペラ劇場オーケストラ、副首席契約団員。自身の出身地である地方都市にて、音楽祭を定期的に主催している。
アンナ マイヤ・ライホ イヘクウェアズ(トロンボーン・トゥルクフィルハーモニー副首席)
元フィンランド護衛隊音楽隊副首席。トゥルク・ジャズオーケストラの設立メンバーでもあり、ジャンルを超えたクロスオーバーを得意とするトロンボーン奏者。
児島瑞穂(ユーフォニアム・北ヘルシンキ音楽学校)
東京都調布市出身。国立音楽大学、フィンランド国立シベリウス音楽院卒業。フリーランス音楽家。トロンボーン奏者としても、オーケストラの契約団員やエキストラとして活動。
アレクシ・サラスカリ(テューバ・北部キュミ音楽学校)
キュミ・ブラスイベント芸術監督。吹奏楽指導者、指揮者としての評価も高く、フィンランドの吹奏楽指揮者オブザイヤーを2020年に受賞。
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