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2018
05.15

International Trombone Festival(ITF)2020 の日本開催の意義は何なのか?

これまで欧米のみで開催されていたInternational Trombone FestivalITF)が今、2020年の日本での開催に向けて動き出しています。

https://itf2020japan.com/

あくまで個人的意見ですが、2015年のスペイン・バレンシア、2017年のアメリカ・カリフォルニアのITFに参加した経験、1年ちょっとですが、アメリカに留学した経験を踏まえ、日本開催の意義を考えてみたいと思います。


世界を知るチャンス!

 

日本(特に東京)は世界的にも恵まれた場所で、生きていくために必要なものは全て揃っていると言っても過言ではないですよね。

それはライフラインにとどまらず、音楽でも同じです。

吹奏楽部が無数にあり、子どもの頃から楽器に触れる事ができ、専門に勉強するための音大があり、プロのオーケストラやジャズのライブハウスも多数あります。

僕はフィリピンの貧困地域の支援活動などもやっていたのですが、やはり日本は恵まれていると感じます。

一見トロンボーンとなんの関係もない話に感じるかも知れませんが、僕は、

日本人は、この環境が当たり前過ぎて、世界を知ろうとしていない人が多い

と感じています。

例えば野球やサッカーのようなメジャーなスポーツは、放っておいても海外の情報が入って来ますよね。イチローや大谷、本田や長友を知らない人はいないと思います。

特にサッカーは、メッシやロナウドのような世界トップクラスの選手の情報も日常的に入って来ます。

これが意味する事は何なのか。

サッカーの日本代表は、FIFAランキングを見ても、決して強いとは言えません。どう考えても南米や欧州のトップチームとはレベルが違いますよね。

トロンボーンも全く同じで、一部ワールドクラスの日本人プレイヤーもいますが、やはり全体のレベルはまだまだ欧米には追い付いていないと思います。

サッカーも同じように、世界のレベルには追い付いていませんが、世界を知ろうとする努力、追い付こうとする努力はトロンボーン界よりはしている気がするんですよね。

(実際、2015年、2017年のITFでも、会場にいた日本人は2,3人です。それだけ皆さん、外に出ないんです)

今回ITFを日本で開催するというのは、「オリンピックやワールドカップを日本でやりましょう!」というのと同じレベルの話なんです!

前述した通り、日本はまだまだ世界のレベルに追い付いていません。つまり、今回日本で開催出来るかどうかは、

日本はまだ、世界に試されている段階

なんです。

残念ですが、この事実を謙虚に受け入れる必要があります。

ツイッターに上がっている質問などを拝見させていただくと、

2年も先の、開催されるかどうかも分からない、具体的に誰がゲストとして招聘されるかも分からないイベントに、スケジュールを空けて数万円を出す、そんな無茶苦茶な話があるか!」

というようなご意見がありますが、本当にごもっともで、まともな「買い物」の感覚からすれば、非常識極まりないお願いなんだと僕自身も思います。

ですが、今回に関しては、そういう論点ではなく、日本が世界に試されているプレゼンテーションなんですよね。

未来の日本のトロンボーン業界や音楽業界が、世界と対等に渡り合えるようになるかどうかの、一つのターニングポイントではないかと僕は思っています。

つまり、これは、買い物ではなくて投資です。

サッカーの話に戻りますが、メッシやロナウド、本田や長友を身近に感じているからこそ、

「将来はサッカー選手になって、日本代表に選ばれて、ワールドカップに出場したい!」
このような夢を持つ子どもたちが育ちますよね。

2002年にワールドカップが日本で開催され、実際に世界のレベルを肌で感じたり、中田英寿選手などに憧れた世代が今、世界でたくさん活躍しています。

トロンボーン業界にも、そういう夢があって欲しいと思いませんか?

僕なんかはだだの雑草ミュージシャンですが、ありがたい事に、国内外でワールドクラスのミュージシャンとたくさん共演させていただく機会がありました。

2015年、2017年のITFでも、メッシやロナウドクラスの音をただ聴くだけではなく、普通にお話をさせていただいたり、写真を撮らせてもらったりして、世界を身近に感じる事が出来ました。

※ITF2015,2017で会った人たちの写真(Facebookにたくさん上げていますので、良かったら見てみて下さい)

2015年(スペイン・バレンシア)
ミシェル・ベッケ氏(フランス)
ゾルタン・キス氏(ムノツィルブラス/ハンガリー)
マーク・ナイチンゲール氏(イギリス)&ジャック・モージェ氏(フランス)
アラン・トゥルーデル氏(カナダ)
デイブ・テイラー氏(アメリカ)
ゾルタン・キス氏(ハンガリー)&ヨルゲン・ファン・ライエン氏(オランダ)&バート・ファン・リール氏(オランダ)&キャロル・ジャービス氏(イギリス)

2017年(アメリカ・カリフォルニア)
ワイクリフ・ゴードン氏&ポール・ザ・トロンボニスト(YouTuber)&スコット・ホイットフィールド氏&ジョン・フェドチョック氏ほか(全員アメリカ)
ビル・ライケンバック氏(アメリカ)
ビル・ワトラス氏&ディック・ナッシュ氏(アメリカ)
アレックス・アイレス氏&アラン・カプラン氏&アンディー・マーティン氏・ビル・ライケンバック氏ほか(全員アメリカ)

これはYouTubeでは絶対体験出来ないんです!

このような体験が、将来日本から世界に輝くスターを生むのではないかと思っています(先に生まれた人間としては、若い世代のためにより良い環境を作るのも、一種の責任、義務ではないかと考えています)。

今回日本で開催されるとアジア初となるそうですが、これは、欧米がアジアの中でも日本に期待をして下さっている表れでもあります。

でも、逆に言えば、開催が実現出来なければ、失望に繋がる可能性もあります。そうなると、待っている未来は、しばらくアジアでの開催は見送られるか、話が他のアジアの国に移るかではないでしょうか。

日本は島国で(外に目を向けていない)、恵まれているので、周りを見渡しても「アジアの中で日本が一番」と思っている人も多いと思います(どこかでアジア諸国を見下しています)。

でも、本当にそうでしょうか?

例えば、シャープという大企業は、ホンハイという台湾の企業に買収されました。

台湾に限らず、アジアの新興国の発展は目を見張るものがあり、一概に日本が一番とは言えない状況にあると思います。

個人的には、アジア各国に、島国の日本はおいてきぼりにされるのではないかという危機感を持っています。

少し飛躍し過ぎた話になっているかも知れませんが、今後の日本のトロンボーン業界、音楽業界のために、(子どもたちのために)大人が一丸となってこのプロジェクトを実現させるのもありではないでしょうか。

アジアの中ではトロンボーンは先進国だという誇りを持つ。それこそ「ジャパンプライド」だと思います

世界の期待に応えるためには、なにがなんでも開催を実現させなくてはなりません。

東京、大阪じゃなくて「日本」

今回、「日本への誘致がなぜ首都の東京ではなく、関西なんだ?」という声も聞こえてきます。

欧米開催の場合、通常7月はすでに夏休みなので、音大などの施設を使わせてもらえるのですが、日本はまだ学校がある時期なので、使用が困難らしいです。じゃあ、日本の夏休みに合わせれば良いじゃないか?と思うかもですが、そうすると、有名アーティストたちのオフシーズンも終わってしまうので(オーケストラなどのシーズンが始まってしまうので)、来日が出来なくなります。

音大施設が使えないので、公共施設を利用する事になるのですが、開催出来るかどうか分からないイベントに協力しようと名乗り出てくれたのが兵庫県西宮市だったようです。

あとは、東京オリンピックの直前で、東京の混乱、混雑が予想される(ホテルなどの確保が難しい)のも理由の一つかも分かりません。

これもぶっ飛んだ個人的意見かも知れませんが、日本は関ヶ原の戦い以降の東西のライバル争いが血に染み付いている気がするんです。今回も、東京が大阪に負けたかのような、、、

そんな事、どうでも良くないですか?

皆さん、日本はアメリカのカリフォルニア州の中にすっぽり収まるって知ってますか?

アメリカ国内だったら、東京から大阪なんていうのは、同じ州の中でちょっと移動している程度の話なんですよね。

これは土地の問題だけではなく、それだけ欧米人の物事の考え方、スケール、視野が広いという意味でもあります。

東京、大阪、どちらの開催でも良いので、日本という一つのカテゴリーで団結すべきだと僕は思います。

トロンボーンで「お・も・て・な・し ♪」をしよう!

海外経験があり、こうやって日本の良くないところ、欧米の良いところを書くと、藤井は日本が嫌いなんじゃないかとか、欧米かぶれしてるんじゃないかと思われがちですが、僕は日本が好きです。

海外にいたからこそ、それを強く感じます。欧米の多くの来日経験があるアーティストも、日本はいい国だよねと言ってくれます。

今回は、その日本の良さを世界に知ってもらうチャンスでもあるのではないでしょうか。招聘アーティストだけではなく、学生さんなど、海外からのたくさんの参加者に日本を知ってもらう事が出来ます。

僕はトロンボーンというある意味マニアックな楽器をやっていても、なるべく音楽が普段の生活に密着していたいと考えています。

2015年のスペイン・バレンシアでの開催の時も、ただトロンボーンフェスに参加するだけだったら、わざわざその国を訪れた意味がありません。

ほんの少しスペイン語を覚えたり(セルベッサ ポルファボール=ビールください、だけですが。笑)、パエリアなどの料理を味わったり、教会に行ってみたり、現地の人と仲良くなったりしてきました。

↑ この人、ただのレストランの店員さんです(笑)。

こういった文化に触れる事で、「ああ、ここからクラシック音楽が生まれたんだな」なんて事を感じるんです。

もちろん日本の音楽のルーツは別にありますが、海外の文化を取り入れ自分たち流にアレンジするのは得意な国ですよね(カレー、ラーメン、明太子パスタのように)。

日本人は日本人らしく、世界を「お・も・て・な・し ♪」してみませんか?

トロンボーンという共通言語がある分、コミュニケーションはずいぶん楽だと思います。

運営サイド、事務局に期待する事

前述したような一般の方からの質問は本当にごもっともなので、大変かとは思いますが、数人でも良いので、招聘出来るアーティストを確約させていただけると良いですよね。

それから、つい最近、日本が世界に誇るスーパートロンボーンプレイヤーの中川英二郎さん率いる「スライドモンスターズ」が話題となりましたが、こんな凄いユニットが実現し、関東で聴けてしまうのが日本の恵まれたところなので、やはり「わざわざ関西に行こう!」と思わせてもらえる企画(ITFでないと実現不可能な企画)をしていただきたいと思います

最後になりましたが、大阪生まれの東京育ち、アメリカ在住経験のある一人の日本人トロンボーン奏者という立場で、このITF日本誘致を陰ながら応援したいと思っております!

https://itf2020japan.com/

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PROFILE
フジイ ヒロキ
フジイヒロキ/藤井 裕樹

株式会社マウントフジミュージック代表取締役
Trombonist, Composer, Arranger,
Teacher, Writer, Producer, Consultant

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