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2020
06.28

音楽家の働き方改革/フリーランス音楽家(ジャズ・クラシック)の経営研究室(Vol.5)

前回の記事「そもそもフリーランスとは?」からだいぶ間が空いてしまいました。

緊急事態宣言が解除になり、おかげさまで少しずつ仕事も戻り、やる事が増えてきています(更新頻度が落ちると思います)。

東京都のアラートやステップも全面解除になり、当社でも先週21日から、大宮のビッグバンドクラスを再開しました。とはいえ、金管とサックスを分けた形の分奏レッスンという形を取り、通常に戻るのはまだ先になりそうです。

コロナ禍で改めて直面している問題は、衣食住のように、直接生存に関係のない音楽のような職業は、緊急事態では仕事として成立しづらいという事ですね。これは認めざるを得ないかと…

僕が過去、一緒にお仕事をさせていただいた中でも超が付く大物である矢沢永吉さんですら、「デビュー48年で初めての経験、死活問題」だとインタビューで答えています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e4736314daf97d7279fe5290076955fcf7c733ea

いま僕が強く感じているのは、「演奏家一本」というような「専業」にこだわらず、「副業」「複業」という形でリスク分散しておく事の重要性です。

僕は以前から自分自身のトロンボーンの能力を冷静に自己分析し、それ一本で仕事をしていく事は難しいと思っていたので、比較的早くからリスク分散をしていました(単純にいろいろやりたいという好奇心でもあったのですが)。

もちろんトロンボーンでも、頑張ればもっと上手くなるだろうし、稼げると思うのですが、東日本大震災規模の災害や、ほぼ毎年起きている豪雨や台風被害もあります。

僕の母親は白血病で30代後半で亡くなっているし、同世代の友人でも癌や脳疾患で命を落とした人もいて、病気も決して他人事ではないですよね。

災害、病気といった要因だけでなく、ジャズやクラシックはお客さんの平均年齢が高い現場も多いので、少子化や人口減少により、これからマーケットが縮小していく懸念もあります。

つまり、

今回はたまたまコロナの影響が出ただけで、この危機が去ったとしても、また同じような事が起きる可能性が高く、それはもはや「緊急事態」ではなく、「日常」になる気さえしているのです(実際、数十年に一度と言われる豪雨や台風は毎年来るようになっています)。

ジャズやクラシックという音楽そのものは先人が築きあげてきたもので、伝統を大切にしていく必要がありますが、社会情勢や気候は大きく変わっているので、職業音楽家は生きていくために、過去の習慣、決まり事に縛られずに、より柔軟になる必要があるのではないでしょうか。

日本の年功序列の縦社会、多数決に流されやすい社会では、年配の大学教授や業界の大御所のような方の影響力が大きく、なかなか変化が起きづらいのですが、その方々の時代には当たり前だった「専業」が、すでにスタンダードではなくなっていると思うのです。

アメリカ人の働き方は?

ちなみに僕が留学していたラスベガスでは、「こんなに上手い人がふだんは不動産屋なの?会計士なの?」みたいな事がたくさんありました。いまからもう15年も前の話です。

3年前、久々にラスベガスを訪れ、当時のビッグバンド、吹奏楽クラスのトロンボーン仲間に再開しました。彼は当時、世界的なサーカスカンパニーのシルク・ドゥ・ソレイユのショーにレギュラー出演していたので、いわゆる「定職」だったのですが、ラスベガスのショーでトロンボーンが入っていて、レギュラーで仕事があるのはたったの5人だと言っていました。

ブロードウェイミュージカルの演目や、フランク・シナトラトリビュートショーみたいなのがあれば一時的に仕事が増えるかもしれませんが、人気のないショーはすぐに打ち切りになる世界なので、安定して職を得るのは本当に大変だと思います(トロンボーンのような楽器ではなおさらです)。

知らない人からしたら、ラスベガスのような一大エンターテインメントタウンでは仕事がたくさんあり、潤っている演者がたくさんいるイメージかもしれませんけど、日本より優秀な人材がゴロゴロいて、なおかつ少ないポジションを奪い合っている、し烈な競争社会です。

おそらく音楽の仕事がない時は別の仕事をしている、安定した正社員のような一般職を掛け持ちしているのも当たり前の光景だったように思います。

3年前に急にこんな状況になったのでなく、僕が留学していた15年前にもすでに似たような状況だったので、日本、特に東京は恵まれているけど、近い将来、日本も同じような状況になると感じていました(コロナの影響で、予想より早まってしまいましたが…)。

(グローバルな社会では、海外で起きている事が近い将来、日本で起きる場合もあるので、未来の予測に役立ちます)

ちなみにシルク・ドゥ・ソレイユは現在、ラスベガスにあるような常設劇場と、テントタイプで世界中を回るショーがすべてストップし、95%のスタッフをレイオフ(一時解雇)にしているそうです。日本と違って、良くも悪くも契約がしっかりされているため、会社に過失がない不可抗力で危機的状況に陥った場合、簡単に一時的な解雇が出来、給料を補償する必要がないんだと思います。これは会社側のリスク管理だとも言えますね。

※2020/7/1追記
ブログ公開の直後、シルク・ドゥ・ソレイユが破産申請に入ったというニュースが出ました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200630/k10012490141000.html

アメリカがフリーランスに対してどのような補償をしているかまでは把握していませんが、いざとなったら国や自治体が助けてくれないからこその企業のリスク管理かもしれません(日本の補償に文句を言いたい気持ちもわかりますが、頑張ってくれているほうかもしれません)。

ラスベガスだけでなく、ニューヨークでもロサンゼルスでも、エンタメ、音楽に関わる人は元々厳しい状況で勝負しているので、はじめから腹をくくり、本業がダメならほかで稼ぐという意識があるように思います。

前述のシルク・ドゥ・ソレイユでプレイしていた友人は、昨年退団し、コンピューターサイエンスか何かの勉強のために大学に入り直しています。結婚して子どもが2人いるのですが、家族を養っていくためにも、不安定なエンタメ業界だけでなく、「これから伸びる分野で手に職を」と考えたのかもしれません。結果的にこの友人もコロナの影響は少なかった(リスク管理が出来ていた)と言えます。

もう一人、僕が日米で共演させていただいた超一流のジャズトロンボーン奏者のアレン・ハーマン氏は、コロラドの大学でジャズと物理学を教える教授です。

来日は基本的に物理学の教授としてで、講義を行う大学から渡航費、宿泊費、報酬を受け取り、オフの日に僕たちとライブをやっていました。

最近あまり見かけなくなりましたが、アメリカ人のお笑い芸人、厚切りジェイソンさんは、IT企業の役員との「二足の草鞋」ですね。

「日本人はなぜ、芸人を目指すと決めたら、会社を全部辞めたり、すべてを捨ててしまうんだろう?もっとうまくやればいいのに」といった事を著書に記しています。

日本の場合「自分を追い込む覚悟」のような意味合いがあり、僕もその覚悟があったからここまで来られたとは思いますが、このブログにも書いたとおり、時代は刻々と変化しているので、これからの日本はもう少し多様な生き方、複業、副業をもちながら音楽を仕事をにする人が受け入れられる社会になってもいいような気がしています(日本はまだまだ、専業でやっていないと負け組のレッテルを貼られる風潮を感じます)。

音楽だけを仕事に出来ていても、お金のために安い仕事をたくさんやっていたり、やりたくない仕事、やりたくない人と一緒の現場を仕方なくこなしている人もたくさんいます。

本当に音楽が好きなら、ほかで安定して稼ぎ、心から自分の好きだと思える事だけやったほうが幸せになる人も増えるかもしれません。

もちろんアメリカ社会がすべて正しいという気もないし、日本のほうが良いところもたくさんあるのですが、多様な、柔軟な働き方に関してはアメリカから学ぶ事があると考えています。

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PROFILE
フジイ ヒロキ
フジイヒロキ/藤井 裕樹

株式会社マウントフジミュージック代表取締役
Trombonist, Composer, Arranger,
Teacher, Writer, Producer, Consultant

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