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2022
11.11

唯一無二!『ミューズ・トロンボーン・カルテット♪』

当サイトで、昨年4月から今年の3月までの1年間、『幸せの国フィンランドからの音楽便り』と題するブログを連載してくれた(※)児島瑞穂さんが所属する「ミューズ・トロンボーン・カルテット」のデビューコンサートツアーが行われ、8月14日(日)の東京公演にお邪魔してきました。

「メンバー全員がヨーロッパ在住の女性トロンボニスト」というコンセプトの「ミューズ・トロンボーン・カルテット」は、ほかとは一線を画した、とても見応え、聴き応えのある素晴らしい内容でした!

※児島さんとは、お互い都立高校の吹奏楽部に在籍していた時からの友人で、当時はユーフォニアム奏者でした。現在はフィンランド在住で、トロンボーン奏者としても活躍しています(詳しくはぜひ、連載記事をご覧ください)。

 

トロンボーン業界あるあるって?

実はこれ、「トロンボー業界あるある」なんですけど、「トロンボーンのコンサートのお客さんは、ほぼ全員がトロンボーンをやっている人」なんですよね。

僕はジャズやポップスのフィールドで仕事をしていましたが、この「あるある」はクラシック業界のほうが強い傾向にあると感じます。

原因は、

「奏者が、自分の音大の後輩や、教えている吹奏楽部や音楽教室の生徒さんにしか集客をしない(出来ない)」

事だったり、


「演奏する曲目がトロンボーン吹きでないとわからない、楽しめない内容になっているから」

だと思います。

誤解を恐れずに、少々乱暴な表現をすると、「演奏する側も聴きに来る側もマニアック」なんです。

トロンボーンを演奏する人は、「人の演奏を聴きに行く事よりも、まず、自分が演奏を楽しみたい、練習したい」という思考になりがちで、たとえばアマチュア奏者の場合、自分自身が吹奏楽団やオーケストラに所属していて、週末が練習日だったりするので、そちらの活動を優先して、プロが開催するコンサートには足を運ばないという事も起きるそうですね。

ちなみに、オケスタ(「オーケストラスタディ」と呼ばれる、オーケストラの中でのトロンボーンが演奏する重要な箇所だけを抜粋した教本)のクリニックやセミナーを開催すると、結構な人が集まるそうです。

トロンボーンをやっている人でさえ、トロンボーンのコンサートを「音楽やエンターテインメント」として楽しむというより、「自分の上達のため」という「技術面」でとらえているのかもしれません。

ちょっと悲しい話ですよね。

ただでさえピアノやヴァイオリン、サックスなどに比べて人口の少ないトロンボーンで、みんなが小さい池の中に釣り糸を垂らして魚を取り合ったら、当然魚は足りなくなります(集客に苦戦します)。

同じ池の中で泳いでいたら(いつもの所属団体だけで演奏や練習をして、良い生演奏に触れなかったら)、まさに「井の中の蛙、大海を知らず」になってしまいますよね。

児島さんたちはヨーロッパを拠点に活躍しているわけですが、ヨーロッパでは日本よりも「リスナー文化が育っている」と言います。

プロとして演奏を「供給する側」は、ある意味ディズニーランドのエンターテインメントのように、もっと一般のリスナーが聴いても楽しめるコンサートを創る必要があるし、アマチュアとしてコンサートに足を運ぶ「需要側」も、技術向上のために自分の楽器だけを聴きにいく、学びにいくのではなく、「純粋に音楽を楽しむ」という視野の広さが必要なのではないでしょうか。

こういった課題があるなか、

ミューズ・トロンボーン・カルテットは、選曲、編曲を工夫したり、衣装チェンジやタップダンスなど、さまざまな演出を取り入れたり、これまでの日本のクラシックのトロンボーンアンサンブルにはない「挑戦」をしていたかと思います。

日本人は外人が好き!?

もう一つ、日本人アーティストが日本でコンサートをやる(興業を成功させる)難しさは、「日本人の外人好き(外人コンプレックス)」にあります。

ちょっと話が逸れますが、皆さん、アパレル広告を思い出してみてください。日本のお店で、顧客・ターゲットも日本人なのに、なぜか白人のスタイルの良いモデルさんばかりを起用しているのを見て、違和感を感じた事はありませんか?

これ、海外から見ると、結構不思議な光景らしいですよ。

ちなみに、お隣の韓国や中国でも、ちゃんと自国のモデルを起用している事が多いそうです(自国に自信、誇りをもっています)。

音楽の話に戻すと、

「クラシックの発祥であるヨーロッパの音楽は、欧米人が演奏したほうが上手いに決まっている」というような先入観があり、どうしても来日アーティストのコンサートにお客さんが集中してしまうんですね…

※今年はコロナでこの2,3年来日公演が出来なかったアーティストのツアーが同時期に重なったので、ミューズ・トロンボーン・カルテットもなかなかに大変だったようです。

確かに、サッカーのように、やはりヨーロッパのレベルは高くて、メッシやネイマールのようなレベルの選手は日本には少ないかもしれませんが、「なでしこジャパン」の澤穂希選手は2011年のワールドカップで優勝し、得点王・MVP、FIFA最優秀選手賞(バロンドール)を受賞しています。

ミューズ・トロンボーン・カルテットのメンバーは、リーダーの清水真弓さんを筆頭に、ヨーロッパの有名オーケストラで首席を任されているような、まさにトロンボーン業界、クラシック業界の「なでしこジャパン」のようなアーティストです。

日本人のリスナーも「日本人だから、外人だから」という見方ではなく、「ミューズ・トロンボーン・カルテットだから聴きに行く」「自国のアーティストを応援する」というような意識が必要なのかもしれません。

余談ですが、これは僕がアメリカのサンディエゴに(語学)留学していた時の話です。

正直それほど上手くない(すみません…!)プロの金管五重奏のコンサートに、近所の明らかに楽器なんてやっていなそうな人たちが集まって鑑賞し、終演後にはスタンディングオベーションを贈っていたのがとても印象に残っています。


技術だけで判断すれば、日本にももっと上手いブラスの人(金管奏者)はたくさんいますが、地元の人に楽しんでもらおうという意識や、それを応援するリスナーという関係は、ちょっと日本では体験出来ないな(足りないな)と思ったものです。

女性がより活躍出来る社会・音楽業界に!

最後に、ミューズ・トロンボーン・カルテットの特徴の一つである「女性」について。

やはりヨーロッパのほうが多様性が受け入れられていて、女性であっても活動がしやすいと児島さんたちは言います。


幸せの国フィンランドからの音楽便りVol.6「働く女性は幸せか?

詳しくはこちらの記事を読んでいただきたいのですが、

日本は政治の世界や、会社や学校でも、大臣、社長、校長といったポストは、まだまだ男性社会ですよね。

こういった社会問題も、少なからず「女性の音楽家の日本での働きやすさ」に影響があるような気がします。

まとめると、

・トロンボーンの人しか聴きに来ないトロンボーンのコンサートをなんとかしたい!(一般のリスナーを育てたい!)

・欧米人に負けないパフォーマスで評価されたい!

・女性アーティストがより活躍出来る日本になってほしい!

こんな強い想いをもち、メンバーひとりが課題に立ち向かった「チャレンジング」なコンサートだったように感じました。

ミューズ・トロンボーン・カルテットの挑戦はまだ始まったばかり。これからの成長、活躍が楽しみです!

マウントフジミュージックでも、可能な限り応援していきます!

※「ミューズ・トロンボーン・カルテット」の結成のきっかけや、人選、グループの特色などは、僕が音楽ディレクターを務める「NPO法人ネクストステージ・プランニング」のブログで、リーダーの清水真弓さんのインタビューを中心に紹介させていただいていますので、ぜひそちらもご覧になっていただけると嬉しいです!

『必見!ヨーロッパで活躍する4人の女性トロンボニスト♪』

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PROFILE
フジイ ヒロキ
フジイヒロキ/藤井 裕樹

株式会社マウントフジミュージック代表取締役
Trombonist, Composer, Arranger,
Teacher, Writer, Producer, Consultant

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